アグロエコロジー
インドの農薬、化学肥料工場訪問
今回は、オーガニックでなく、慣行農法を推進する農薬・肥料企業を訪問してきました。
★化学肥料会社のロビー活動★
インドの農業補助金のひとつには、肥料や農薬への補助がある。これがかなり大規模なもので、多くは農家へ直接還元されず、肥料・農薬製造業者へと渡っている。肥料・農薬製造業者のロビー活動は相当なもので、政治家も無視できないのだ。
そんなところにどうやって訪問することになったかというと・・・
今私がかかわっている、EUが出資する有機農業プロジェクトの前任者が、何と州2位の肥料製造業者の御曹司。
彼自身は今、オランダのコンサルで働いていてインドにはいないが、今回の視察を手配してくれたのだ。
★化学肥料会社訪問★
バス停には、運転手とマネージャーが待っていた。
ここで待つようにと案内された場所は、熱帯植物と100本のココナツが植わった庭園。
社長がアーユルヴェーダの治療を行うために使っている保養所なのだという。
この2ヶ月半で、インドの底辺と頂点を見た気がした・・・
社長が保有している3つの農場のうち、2つを案内してくれた。
ヨーロッパへの輸出向けのぶどう農園には14人の労働者が働いていた。
「薄い量だから人に害はない」というものの、あまり薬をかぶりたくないものだ。
「有機農業を勉強している君たちには悪いが、インドで100%有機農業は不可能だ」
と、社長。
あの・・・、息子もオーガニック専攻してるんじゃ・・・
と聞きたかったけど、聞かないことにした。
★ビジネスチャンスとしてのオーガニック★
この企業は農家へのコンサルティングも行っている。
どの肥料を使えばどう変わるか、農場でデモンストレーションを行うのだ。
社長によると、
「いままで薬を使っていた農家は簡単には習慣を変えられない。農薬や化学肥料の代わりに、生物農薬やオーガニック肥料を購入するにはより高くつく。
しかし、ニームオイルや薬草の需要は少しづつ増えつつある。」と。
100%オーガニックは無理だが、農薬の量を減らし、薬草のエキスを入れる農家が増えてきているという。
ここで売られている高価な有機農薬や有機肥料を買えるのは大地主くらいだろう。
外部からの投入に頼りきっている近代農家は、地元の資源を利用して自分でオーガニック肥料や薬を作るという発想がない。
有機農業への転換は、「有機資材を入れる」ことだと思い込んでいる。ここにビジネスチャンスがあるのだ。
インドのオーガニックの方向性には大きく2つあり、ひとつはこの企業のように、付加価値をつけて高い値段でヨーロッパ市場への輸出を目指す、ブランド戦略としての有機農業、それから、肥料を買うための借金に苦しむ農家が、地元の資源を使い、農薬・化学肥料からの脱却を目指す、Subsistence戦略としての有機農業。と、個人的に認識している。
しかし、小規模農家が共同で有機認証を取得するシステム、ICS(内部管理制度)を使えば、認証費用が分割でき、モニタリングも参加者自身でおこなうことができる。
以前紹介したマイソールの例のように、Subsistence Farmer(自給農家)が共同で認証を受け、輸出を行うことで両方の目的を達成できるかもしれない。
オーガニックを勉強する化学肥料会社の御曹司は、今はコンサルタントとしてオランダで働いているが、やがて家督を継ぐという。
彼はインドの有機農業をどの方向にもっていくのだろうか?
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プロフィール
「アグロエコロジー」続編:
http://agro-ecology.blogspot.jp/
たねのもりびと
ワーゲニンゲン大学大学院
有機農業研究科修了
(アグロエコロジー専攻)
Wageningen University
MSc of Organic Agriculture
ブータン政府GNH委員会インターン
国を100%オーガニックにする国家プロジェクトに従事
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