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地獄の36時間列車の耐久レース

ブータン人たちとの旅は楽しいけれど、移動が多すぎて本当に億劫だ。
キレイな水と自然に慣れているブー人にも、汚いインドでの強行旅行はキツイ様子で病人続出だ。

旅のクライマックスは、デリーからアッサム州グワハティに向かう列車だ。AC(エアコン)車を取る予算がなかったため、スリーパークラスの一番下、一番スローな電車にのるはめになった。
君は差額を自腹で払うならAC車両に換えてもいいよ、と言われたけれど、2日半も一人でAC車にいても暇だろうと思い、ブータン人たちと一緒に残った。
デリー駅夜11時発。2泊3日、最後の旅の始まりだった。




夜のニューデリー駅はごった返していた。電車が到着するや否や、乗客はドアが開く前に次々と窓から乗り込んだ。スリーパークラスは座席指定にもかかわらず、どんどん押しかけてくる。気を抜けば座る場所がなくなっている。そして、どうやって乗ったのか次々と物乞いが来て、時にタンバリンで歌いはじめる。女装したオカマがブータン人の頬を叩き、お金を要求する。聞きしに勝る光景だった。

1日目はまだこの状況を楽しむ余裕があった。朝、列車は一気に冷え込んだ。毛布は持ってきていない。着れるだけの服を着て、バスタオルをかぶるもまだ寒い。寒さに耐えながら朝を待つ。
やっとうつらうつらしてきたころ、朝5時。強制チャイで目を覚ます。
「チャイ!チャイ!チャイ!」と、大声で係員が売り歩く。ほんと放っておいてくれない国だ。

朝になると、乗客は一気に増えた。ベッドには所狭しと切符をもっていない乗客が座り込む。彼らは座席を買う余裕がなく、子供を抱えた女性を追い出すことはできない。ベッドに座れない乗客は床に座り込み、身動きがとれないほどだった。

そんな中、日中は40度を越えるであろう熱風が襲った。扇風機の風はむなしく熱風を送るのみ。売られているミネラルウォーターは、もはやお湯だった。車内食は食べられたものじゃなかった。めまいと吐き気がした。これは何かの罰ゲームなのか。
この状態が2日も続くのか・・・。果てしない試練のような気がした。差額を払ってACに移りたい気持ちに駆られたが、それは同じく耐えているブー仲間たちへの裏切りのように思えた。

「おお、神よ、サウナのような列車で2日間過ごすことをお許しになり感謝します。」
朦朧とする意識の中でそう唱えるのが精一杯だった。

しかし、ブータン人たちは、押し寄せるインド人との会話を楽しんでいるようだった。時にジョークを言いながら、食べ物を分け合い、友好関係を築き、おかげで夜は穏便に寝ることができた。こういうことができるのはほんとにすごいと思う。

プライバシー観念の強い日本で過ごしていると、インド人のしつこさをウザイと感じ、放っておいてほしいと思ってしまう。あえて数日ばかりの友好関係を築く気にはなれなかったのだ。彼らからは多くのことを学んだ。
日本に帰ったらこのウザさ加減が懐かしく思うかもしれない。
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「アグロエコロジー」続編:
http://agro-ecology.blogspot.jp/

たねのもりびと

ワーゲニンゲン大学大学院
有機農業研究科修了
(アグロエコロジー専攻)
Wageningen University
MSc of Organic Agriculture

ブータン政府GNH委員会インターン
国を100%オーガニックにする国家プロジェクトに従事

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