アグロエコロジー
オランダの大学院で有機農業を勉強する留学生の日記
慣行農法が悪いわけではない
今回は、オーガニックではなく、慣行農法(conventional)の農場を見学してきました。
オーナーは、オーガニックを信じていないという。それはなぜか。
有機農業の限界と可能性についてインタビューしました。
オーガニックを否定する理由
農家さんの回答に対し、有機農業を学ぶ多くの生徒が反論。
と、言いたい放題。
ここまで聞くと、この農家さんは農薬や化学肥料を信じ、オーガニックを否定する慣行農家だと思われるかもしれない。
しかし、彼なりのポリシーがあって厳密な有機ではないけれど環境と動物の福祉の保護を実践しているのだ。
「ヨーロッパでは、食糧生産が過剰になっている。どうして生産をつづけないといけないのか。私は疑問に思っている。疑問に思いながら、牧場を継いだ。」
と、オーナー。
彼は、生産量の高いホルスタインではなく、オランダの古い在来種に変え、抗生物質の投与を止めた。
ミルクの生産量は減った。
しかし、手のかかるホルスタインと違い、在来種はおとなしく、扱いやすい。抵抗力も高く、薬があまりいらない。
▲人懐こいオランダ在来種の牛たち
「収入よりも生活の質を大事にしたいと思ったんだ。家族が一番大切だから。」
彼は、スローライフを目指しているという。
抗生物質を減らし、一部では無農薬も取り入れている。
生産量よりも動物と家族の健康を考えている。
プレミアム商品の輸出よりも、地産地消を考えている。
彼は、オーガニックのスピリットを実践しているのだ。
ただ、オーガニックという言葉が嫌いなのだ。
確かに有機だからいいというわけではない。
市場を求めて輸出に頼ればエネルギーを余分に使うことになる。
慣行農法でも環境や動物の福祉に配慮している農家さんも多い。
オーガニックへの転換を奨める前に、農家さんがプライオリティを置く目的、土地や資源など現実の制約条件をまず把握することが重要なのではないだろうか。
オーナーは、オーガニックを信じていないという。それはなぜか。
有機農業の限界と可能性についてインタビューしました。
オーガニックを否定する理由
- 1人でやっているので、労働時間が限られている。
- 雑草コントロールが大変。
- オーガニック資材が高い
- デンマークからたくさんの有機農産物が流入し、価格破壊が起こっている。プレミアムプライスが今後維持できるとは思わない。
- オランダではオーガニックのマーケットが発達していない。有機農家は輸出に頼っている。
農家さんの回答に対し、有機農業を学ぶ多くの生徒が反論。
- 多角化を図り、収入源を確保すればいい。
- クオータ制の廃止より価格破壊が起こっているからこそ、高品質を売りにしたオーガニックブランドを確立すべき。
- マメ科植物をローテーションに加えれば外部からの投入がいらないのではないか。
- 労働者を雇えばいい。
- 将来子供が生まれても、農薬と化学肥料を続けるのか?
と、言いたい放題。
ここまで聞くと、この農家さんは農薬や化学肥料を信じ、オーガニックを否定する慣行農家だと思われるかもしれない。
しかし、彼なりのポリシーがあって厳密な有機ではないけれど環境と動物の福祉の保護を実践しているのだ。
「ヨーロッパでは、食糧生産が過剰になっている。どうして生産をつづけないといけないのか。私は疑問に思っている。疑問に思いながら、牧場を継いだ。」
と、オーナー。
彼は、生産量の高いホルスタインではなく、オランダの古い在来種に変え、抗生物質の投与を止めた。
ミルクの生産量は減った。
しかし、手のかかるホルスタインと違い、在来種はおとなしく、扱いやすい。抵抗力も高く、薬があまりいらない。
▲人懐こいオランダ在来種の牛たち
「収入よりも生活の質を大事にしたいと思ったんだ。家族が一番大切だから。」
彼は、スローライフを目指しているという。
抗生物質を減らし、一部では無農薬も取り入れている。
生産量よりも動物と家族の健康を考えている。
プレミアム商品の輸出よりも、地産地消を考えている。
彼は、オーガニックのスピリットを実践しているのだ。
ただ、オーガニックという言葉が嫌いなのだ。
確かに有機だからいいというわけではない。
市場を求めて輸出に頼ればエネルギーを余分に使うことになる。
慣行農法でも環境や動物の福祉に配慮している農家さんも多い。
オーガニックへの転換を奨める前に、農家さんがプライオリティを置く目的、土地や資源など現実の制約条件をまず把握することが重要なのではないだろうか。
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無題
この農家さんの意見、そしてみけさんの意見、まったく同感です。
有機農業と慣行農業の議論を見ていますと、2項対立的に語られていることが散見されますが、僕はそうじゃないと思っています。
慣行農業から徐々に化学合成農薬や化成肥料を減らしていって、最終的に有機農業に移行するようなイメージは、近代化論のようで、至極単線的で単純化されたモデルで怖いです。農の形というのは、そんな瑣末な技術論で終わらせるべきではないように思います。
さらには、さまざまな投入資材が環境を配慮する形に姿を変えている現在、有機か慣行農業かの議論はだんだんその主体がないままに進んでいるような気もしています。
知り合いのインドネシアの農家が、国の認定を拒み続けながら有機に近い農業をしています。認定を受ければ制約が多く、彼の目指す農業がぼやけてしまう、というのが認定を拒否する理由らしいです。その意志の中には、すでに有機か慣行農業かの議論は存在していないように感じます。僕も地元で農業をしていて、この日記の農家やインドネシアの農家と同じようなことを感じることが多いです。
有機農業と慣行農業の議論を見ていますと、2項対立的に語られていることが散見されますが、僕はそうじゃないと思っています。
慣行農業から徐々に化学合成農薬や化成肥料を減らしていって、最終的に有機農業に移行するようなイメージは、近代化論のようで、至極単線的で単純化されたモデルで怖いです。農の形というのは、そんな瑣末な技術論で終わらせるべきではないように思います。
さらには、さまざまな投入資材が環境を配慮する形に姿を変えている現在、有機か慣行農業かの議論はだんだんその主体がないままに進んでいるような気もしています。
知り合いのインドネシアの農家が、国の認定を拒み続けながら有機に近い農業をしています。認定を受ければ制約が多く、彼の目指す農業がぼやけてしまう、というのが認定を拒否する理由らしいです。その意志の中には、すでに有機か慣行農業かの議論は存在していないように感じます。僕も地元で農業をしていて、この日記の農家やインドネシアの農家と同じようなことを感じることが多いです。
- たーやん
- 2010/05/02(Sun)06:03:00
- 編集
有機農業と慣行農法
>たーやんさん
言いたかったことを代弁してくださってありがとうございます。
オーガニックかコンベンショナルか散々議論してきた結果、自分の中では2分論には意味がないという結論に達しました。
決められたオーガニックの基準を遵守しないとオーガニックと呼べないなら、そのルールを越えた多様性が無視されることになります。有機農業自体が多様性と統一性というある種の矛盾を内在している気がします。
その枠にとらわれず、地域に根ざした柔軟な農の形を見ていきたいと思っています。
言いたかったことを代弁してくださってありがとうございます。
オーガニックかコンベンショナルか散々議論してきた結果、自分の中では2分論には意味がないという結論に達しました。
決められたオーガニックの基準を遵守しないとオーガニックと呼べないなら、そのルールを越えた多様性が無視されることになります。有機農業自体が多様性と統一性というある種の矛盾を内在している気がします。
その枠にとらわれず、地域に根ざした柔軟な農の形を見ていきたいと思っています。
- みけ
- 2010/05/09(Sun)21:46:01
- 編集
無題
勉強になります。
農業には多様性があってしかるべきで、
オーガニックの基準に100%遵守するのはどうしても無理が出てきてしまうのもうなずけます。
農業には多様性があってしかるべきで、
オーガニックの基準に100%遵守するのはどうしても無理が出てきてしまうのもうなずけます。
- うし子
- 2010/05/10(Mon)21:18:30
- 編集
ポリシーを持つことは大切
お久しぶりです。今はまた京都なのですね?3月以来、日本の農業はますます窮地に立たされているような気がしてたまりません。そちらのようす、いかがですか?
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「アグロエコロジー」続編:
http://agro-ecology.blogspot.jp/
たねのもりびと
ワーゲニンゲン大学大学院
有機農業研究科修了
(アグロエコロジー専攻)
Wageningen University
MSc of Organic Agriculture
ブータン政府GNH委員会インターン
国を100%オーガニックにする国家プロジェクトに従事
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