アグロエコロジー
ケララでストライキに遭遇(1)
「月曜の深夜0時から24時間のストライキが始まる。」
との情報が入ったのは日曜の午後。
インドのストライキは全国一斉に始まり、野党が主導する。
日本のようなただのストライキでなく、投石や暴動が起こるのが毎度のことらしい。
与党コングレスに対し、ケララは共産党の本拠地。
暴動にもかなり気合が入るのだそうだ。
バンガロールに戻る夜行バスは1日1本、午後2時半発。
バンガロールに着くのは午前6時。深夜にはタミル・ナドゥに入っているはず。
暴動はケララほどひどくないらしいけどかなり微妙な判断だ。
月曜朝、予約していたバスは危険回避のためキャンセルになったと知る。
これでは火曜もバスがでないので、バンガロールに着くのは木曜。
金曜が祝日だから、この1週間何も仕事ができないことになる。
予約を取り直すために街にでると、同じくバンガロールからきたビジューからプライベートバスなら確保できると聞く。
チケット代は2倍の料金だ。
そして、最大の問題は、予約を取り直すだけだと思って荷物をダニアの家に置いてきたのだった。
ダニアの村までは2時間。戻っている時間はない。
ぎりぎりの選択肢の中、荷物はダニアが戻ってくるときに持ってきてもらうことにした。
ダニア「荷物、本当にいいの?大事なもの入ってない?」
みけ「あ、ひとつ。タピオカ弁当が入ってる!あぁ残念!お母さんのタピオカ料理、ディナーにしようと思ったのに!」
緊張した状況に笑いが起こる。
ケララへの旅
研究所で知り合った博士課程のダニアが故郷のケララに里帰りするというので連れて行ってもらうことになった。
ケララといえば、バックウォーター、海岸、シーフード料理。
バンガロールからタミル・ナドゥを通り、ケララに入ると空気が変わる。暖かい風が南国の匂いを届ける。
そしてケララは雨季が年間8ヶ月に及ぶ雨の地。
バックウォーターどころか、スプラッシュ・フロントだった・・。
ケララは海岸部と山岳部に分かれる。
漁、ココナツ、田んぼが中心の海岸部。
そして、生物多様性の宝庫、西ガート山脈に囲まれた山岳部。
ダニアの村は山岳部にあり、アグロフォレストリーが生活の中心だ。
ココナツ、バナナ、ゴム、ティーク、香辛料・・
昔ながらの棚田はこうした換金作物に置き換わり、収益の低い米は隣のタミルナドゥからの輸入に頼っているのだという。
乾燥地帯のカルナータカ州に比べるとケララはフルーツや野菜、魚介類、香辛料がいつでも豊富に手に入るため、食事も豊かだ。
ダニアの家にはひっきりなしに来訪者が訪れる。
近所の人たちは自分の家のようにくつろぎ、ご飯を食べて帰る。
近所を散歩していると、「ジャパン!ヒロシマ、ナガサキ!スズキ!テクノロジーナンバーワン!」
なんとかコミュニケーションをとろうとしてくれる。
そして、とりあえずお茶をのんでけ。と声がかかるのだった。
こうして、週末の1日が平和にすぎた。
インドの衣装
インドのオーガニック事情
緑の革命は大幅な増産を可能とする一方、肥料、農薬などの外部投入コストも増加し、農家の収益を圧迫している。
2000年、インド政府は、地域資源や伝統知識を活かし低投入を中心とする有機農業の推進を開始した。
National Agricultural Policy(NAP)において有機農業と伝統農法の復興を呼びかけている。
National Programme for Organic Production(NPOP)では、有機認証制度について定められ、250万haの農地が有機農家として認定をうけている(2005年)。
具体的なインドのオーガニック政策は州レベルで進んでいる。
州別オーガニック農産物の年間輸出量
kerala 1,232 t
West Bengal 937 t
Punjab 541t
Himachal Pradesh 521 t
Karnataka 476 t
Tamil Nadu 471 t
私がいるカルナータカ州は2004年、インドで初めてオーガニック政策を制定した。
Karnataka State Policy on Organic Framing (KSPoOF)
- 1cow for 2 acres plan: 家畜の所有を推進
- テクニカルアドバイス: コンポスト、IPM、土壌保全型農業など
- マーケティング
- バイオガス、クリーンエネルギー
私の修士論文の課題は、この政策の評価。
2006年から2009年の間で、オーガニックに転換した農家と、慣行農法を続けている農家で、土壌の質、水質、収入、コミュニティの連帯、労働などにどのような違いが見られるのか。
そして2015年に向けた政策改善シナリオを作成し、農家、NGO、研究者を中心とする参加型ワークショップで提案。各ステークホルダーがシナリオの評価を行う予定です。
州政府オーガニック政策(英語版)のPDF持ってるのでほしい人いたら送ります。
インドでホームステイ
インドでホームステイをするには、PG(Paying Guest)というシステムがあります。
有償ホームステイという意味で、PGというと大体通じます。
月約5000円で食事付きです。
私のステイ先は古典的なインド家庭で、お母さんはほとんど家でお留守番。
ドアに鍵がかかっているのでノックすると必ずお母さんがドアの前にいてあけてくれるのです。
お母さんの食事はゲスト、お父さん、娘が食べ終わった後です。
一番に起き、一番最後に寝るお母さんがキッチンから離れたところを見たことがありません。
なんだか気の毒ですが、お腹がすいてないから大丈夫だといいます。
一人娘のスミタは銀行員。
「インド社会は変わってきているから、今は女性も外に出るのよ」
と言っていました。
伝統衣装チュリダを着てバイクで通勤する彼女。かっこいいです。
本当の豊かさとは何か
インド人の高校生の女の子と友達になった。
ディピからカンナダ語を習っている。
ディピからの質問に苦悶・・・。
D:お母さんは何をしているの?
みけ:ディピのお母さんと一緒でマンションの清掃をしてるよ。
D:お父さんは?
みけ:工場で働いてるよ。
D:みけはどうして働いていないのに、ショッピングするお金があるの?
お母さんの給料はいくら?
ディピは、両親が同じような仕事をしているのに、なぜ私は留学したり、カメラを買ったりするお金があるのか不思議でしかたないようだ。
「私は日本で5年働いていたから貯金があるの」と答えたけれど、納得していない様子。
インドでは親の身分で子供の収入が決まってくるのだろう。
そしてインドでは、結婚後も自由になるお金のない娘に親が仕送りするのだそう。
高等教育を偏重するインドではエリートがお金持ちになる一方で、初等教育に対する政策が疎かにされ、農村に住む大半は文字すら読めない。
彼らにとって安定した職に就くのは並大抵のことではない。
オートリキシャの運転手、大工仕事、雇われ農家・・・日々の食べる分を稼ぐ毎日。街中に乞食があふれている。
借金を苦にした自殺が社会問題となっている。インドでは自殺でも保険金がおりるのだ。
日本では仕事さえ選ばなければとりあえず生きていける。
日本は幸せな国なのだろうか?
ある女性の活動グループを訪問したときのこと。
彼女たちは幸せだと感じたときのことを話してくれた。
「身寄りのない子供を援助して育て、彼女が結婚できた時は本当に幸せだった」
「近所の子が食べ物がなくて困っていたときに米を分けてあげた。今でも彼女は感謝してくれていて、時々食べ物を届けてくれる」
彼女たちも決して豊かな暮らしをしているわけではない。
貧しい村では、困ったときは助け合いの精神が根付いているのだ。
日本ではどうだろうか?
こんな助け合いが身近にあるだろうか?
「私は人生で一番幸せだった時という質問にうまく答えられない。日本では食べるものも着る物にも困らないけれど、助け合いの精神をなくしてしまった。
先進国の日本でも自殺者は増えている。だから物があることが幸せだとは思わない。あなたたちの幸せな話がすごく印象に残っている。」
と感想を述べた。
「本当に日本は幸せじゃないのかしら。私たちの村の誰も海外に行ったことがないけど、
私たちは食べるものがあって、着る物があれば幸せ。いつか日本に行けるのは夢だけど。」
「確かに、たくさん物があれば助け合いがなくなり幸せでなくなるかもしれない。
でもそれは、必要以上のものを持っているからでしょう?最低限以上のものはいらないわ。
もし、それ以上に豊かになれば、他の貧しい国を援助したいわ。
そうすればまた幸せになれるんじゃないかしら?」
彼女たちには本当に諭された。
以前ブータン人のルームメートに言われたことを思い出した。
ブータンは国民総幸福Gross National Happiness(GNH)で世界1位とされている。
「日本人がお金持ちなのは、貯めこんで人に分け与えないからだろう?」と。
彼は、お金が手元にあると、全部人にあげてしまって貯金がないのだそうだ^^;
大学時代にやっていた開発学の世界に戻ってきたのは本当の幸せとは何かを探すためなのかもしれない。
参加型育種・種苗所有権
インドGDPの30%を農業部門が占め、雇用者の60%が農業に従事している。
収入の少ない農家にとって種苗の入手は重要な課題である。
商業的な品種改良は、土着の品種を減少させただけでなく、収量の高い品種は病害虫に弱く、農薬への依存を招いた。
貿易に関する知的所有権Trade Related Intellectual Property Rights(TRIPs)の枠組みがWTOで合意され、発展途上国においても作物品種の保全が求められるようになった。
Union for the Protection of New Varieties of Plants(UPOV)が1961年にパリに設立され、新しい種苗の開発に所有権が認められることとなった。
これにより、所有権のある種を農家同士で交換することは禁じられた。商業的な開発がメインで行われている
先進国と異なり、農民が育種を行っている途上国に適用するに当たって議論があった。
UPOVの動きに対し、途上国においては農業者の権利を守るための種苗保有権確立の活動が見られる。
これは、収入の低い農家の保護、コミュニティにおける伝統的農業の保全につながっている。
いくつかの途上国では、National Plant Breeders' Right(PBR)が制定され、コミュニティー間で品種の共有を行うシステムが推進されている。
北インドの約80%の農家は前年に取れた種を使うと答えている。
Uttaranchal州では半数以上の農家が種をコミュニティ内で交換している。
種を購入しない理由としては、コストが高い、品質への信用が低い、現地の条件に合わない、などがあげられている。
新種に関する情報源としては、農家>政府>NGO>種苗会社の順になっているのが面白い。
農業の近代化が作物の遺伝子の侵食genetic erosionを招く一方で、伝統的なコミュニティにおいては農家の知識が生物の多様性を維持してきた。
まさに科学知識が科学者から科学者へと受け継がれたのにたいし、伝統知識は農家から農家に受け継がれていたのだ。
参加型育種 Participatory Plant Breeding (PPB)は経済的価値だけでなく、社会的、文化的価値に焦点をあて、先進知識と伝統的農法知識を生かした種苗開発の取りくみが途上国を中心に行われている。
農家、科学者、NGOなど新たなパートナーシップによる、品質が高く、農家の需要に合った種苗の低価格での提供が模索されている。
参考サイト:
IDRC http://www.idrc.ca/seeds
FAO http://wwwfao.org/ag/cgrfa/pgr.htm
Erosion Techonology and Concentration (ETC) heep://www.etcgroup.org
Convention on Biological Diversity http://www.biodiv.org
CCAP(China) http://www.ccap.org.cn
LI-BNIRD(Nepal) http://libird.org
Vernooy R., (2003), Seeds that give participatory plant bleeding, International Development Research Center, Canada
インドの土地登記問題
イギリス植民地時代以前から、インドでは慣習的に土地を利用しているものに所有権があるとされていた(Intermesdiary Tenure)。
18世紀、19世紀になると東インド会社が土地利用制度が整備された。
Zamindariは政府が農業収入に対する税を徴収するために利用した。事実上耕作している者をZaminderと呼んだ。
しかし耕作者と土地保有者が異なる場合が見られ、税がZaminderから徴収されるのに対し、彼らははっきりとした土地所有権を有さなかった。
この制度は1954年の農地改革により廃止され、200万の土地保有者は政府からの土地賃借契約を迫られた。
さらに土地所有の分配をはかり、土地所有面積に上限をもうけたため、多くの土地が政府に帰属した。
これらの土地は土地を保有しない農民に配分され、小規模農家の多いインド農地はさらに細分化されていった。
しかしながら、配分は必ずしもうまくいっておらず、多くの州ではプロジェクトの遅れ、定住者選択の問題、組織間の調整不足などにより多くの農民が非保有のままで放置されている。
そして今でも慣習法であるIntermesdiary Tenureは一部で残っている。つまり、耕作放棄地などは耕作したもの勝ちなのだ。
このあいまいさが灌漑設備などへの投資をためらわせる要因になっているといえる。
参考文献
Dandekar V.M. and Nilakantha R., (2008), Poverty in India, Indian School of Political Economy, Bangalore, India
インドの農業政策
1950年代は食糧不足、飢餓が問題となり、穀物の単収は522kg/haであった。
緑の革命により、1950年の収量5100万tから1970年代には1億800万tと飛躍的に向上した。
インド農業は10年で飛躍的に伸びたが、化学肥料と農薬による単収の増加が主な理由である。
政府は化学肥料と農薬に対する補助、食料価格の上昇を抑えるため、食料消費に対する補助を行っている。
人口増加に対する食糧増産が追いついていないため、農業投入に対する補助が必要とされている。
また、水や電力の使用に対する補助は過剰な使用につながっている。
これらの投入量に対する補助金は、"subsidy syndrome"といわれ、灌漑設備や土地、インフラに対する政策の遅れが指摘されている。
緑の革命の恩恵を受け、収量の向上が見られてたのは主に灌漑設備の整った地域や海岸部である。
灌漑対策はパンジャーブ地方、西部地方を中心に進められており、中部、東部、一部の南インドでは対策が遅れている。
灌漑設備の整った地域への移民の増加が見られ、対策の遅れている地域では放棄地が増えている。
お寺の牛小屋
ヒンドゥー教では不殺生を基本とし、カースト上位になるほど菜食主義が厳密に守られているようだ。
クラスメートのインド人は卵や牛乳も食べない。
特に、牛は神聖なものとされており、この寺では牛乳の生産と祭祀用に飼われているようだ。
瘤がついた白い牛には模様が画かれ、祭られている。
牛の世話をしているのは、アメリカから来たという女性。
そして獣医1名と約20名のスタッフがここで働いている。
オランダでは生産量の落ちる5年くらいで食肉加工所行きになりますが、 ここの牛は、15年くらい生きるそう。
そして、司祭が弱った牛を選び、nursaryと呼ばれる施設に連れて行く。
どちらにしろ、最後は食肉処理場へと運ばれることとなるが、生命を全うさせることをモットーとしているのだとか。
プロフィール
「アグロエコロジー」続編:
http://agro-ecology.blogspot.jp/
たねのもりびと
ワーゲニンゲン大学大学院
有機農業研究科修了
(アグロエコロジー専攻)
Wageningen University
MSc of Organic Agriculture
ブータン政府GNH委員会インターン
国を100%オーガニックにする国家プロジェクトに従事
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